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  • 2017/02/03 掲載

OneWeb(ワンウェブ)とはいかなる企業か?ソフトバンクが衛星通信事業に出資のワケ

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米国のベンチャー企業「OneWeb(ワンウェブ)」は、人工衛星から電波を飛ばし、通信インフラの届かない地域にもインターネットを届ける技術を開発しています。クアルコムやエアバスといった通信会社やメーカーが続々とワンウェブに投資していますが、特に注目されたのは2016年12月、ソフトバンクが同社に10億米ドルの投資をするというニュースです。ワンウェブではソフトバンクらから得た資金を使って、米国フロリダ州に世界唯一の大量衛星製造工場を建設することを計画。一週間につき15基もの衛星を従来よりもかなり低コストで製造できる仕組みを作ろうとしています。
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ソフトバンク、エアバスらが出資するワンウェブとはいかなる企業か?
(出典:Airbus Defence and Space プレスリリース)


人工衛星ベンチャーの「OneWeb(ワンウェブ)」

 インターネットとモバイルの登場によって、欲しいものや知りたいことはPCやスマートフォンを開けばすぐ手に入るようになりました。日本で暮らす多くの人々は、インターネットなしでは生活できないと言っても過言ではないでしょう。

 その一方で、インドや中国といった国土が広く人口の多い国、あるいは北アフリカ諸国の一部地域ではインターネットが十分に整備されていない現状もあります。

 世界銀行が行った調査によれば、全世界74億人のうち、インターネットを使っているのは32億人と半数にも満たないことが分かりました。先進国とこうした地域の間には、教育やビジネスの機会が限られてしまうデジタル・デバイド(情報格差)が生まれているのです。

 こうした中、光ファイバーや基地局ではなく、人工衛星を経由して前述の地域をインターネットへ接続させようという計画を立てているのが、米国の衛星通信ベンチャーOneWeb(ワンウェブ)です。

 実は以前から、ワンウェブのような人工衛星から電波を飛ばしてインターネット接続を提供するサービスは存在していました。しかし、人工衛星に加えて電波を受信する端末のコストが高いことから、一般に普及するまでには至りませんでした。従来は数百人の技術者が手作業で人工衛星を製造していたため、コスト削減が難しかったのです。

 これに対して、ワンウェブの人工衛星は少ない部品で軽量化したものになっているため、一般的な航空部品を製造するかのように低コストで量産できるとされています。

ソフトバンク、エアバスらがワンウェブに出資するワケ

 ワンウェブ創業者のグレッグ・ワイラーは2003年頃、アフリカの農村地域で200もの学校へインターネットを敷設する事業を行っていました。

 この事業の経験から、発展途上国の人々へ効率的にインターネット接続を提供する必要を感じ、2007年には人工衛星開発を行うO3b Networks社を創業。そして2012年、世界中の人々に低コストでインターネット接続環境を提供することを目指し、ワンウェブを設立しました。



 ワンウェブの背後には、彼らの計画実現を後押しする強力な投資家たちが存在します。欧米の通信会社クアルコムやバージングループ、そしてフランスの航空機メーカー、エアバスが既存株主として参加し、新たな通信環境の構築を目指してきました。

 そして2016年12月にはソフトバンクが10億ドルもの巨額な出資を決定し、人工衛星の開発・生産が加速されるようになります。

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2018年から稼働開始が予定されているワンウェブの衛星製造工場。この新工場では、一週間に15基の衛星を、従来よりかなり低コストで製造可能なのだという
(出典:ソフトバンク プレスリリース)


 ワンウェブの目指すビジネスモデルは、各国の通信会社にインターネットへ接続するインフラを提供して収益を上げるというものです。通信網を建設するのが難しい辺境地域だけではなく、地震や台風でインフラが機能しなくなった場合の代替手段としても意味があります。また、飛行機や軍用機へ高速インターネットを提供し、空のナビゲーション機能や機体の監視、天気のリアルタイム予測などの実現が期待されています。

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ワンウェブの目指すビジネスモデル

宇宙事業参入でグーグル、フェイスブックが解決したい課題

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 人工衛星の開発や打ち上げに関する市場は、今後ますます拡大が見込まれています。とりわけワンウェブが開発しているような小型衛星は、過去10年で1480基だった打ち上げ数が今後10年で9000基にまで伸びるという予測もあります。

 打ち上げや開発に関わる予算は、2700億ドルに達する一大産業です。ワンウェブのような民間企業だけでなく、政府関係機関が打ち上げる人工衛星も相当数があります。

 代表的な企業は、民間大手の人工衛星開発会社と位置づけられるスペースXです。テスラモーターズの創業者としても知られるイーロン・マスクが創設したスペースXは、グーグルから10億ドルの投資を受け、ロケット開発を行ってきました。

 スペースXはNASAと協業し、圧倒的な低コストでロケットを打ち上げられるという強みを持っています。現時点までに民間初の試みをいくつも成功させ、宇宙ステーションへの商業輸送サービスや再利用可能ロケットの開発を進めています。人工衛星の開発やサービスに特化したワンウェブとは異なり、スペースXはロケットや宇宙船の開発を含めた総合的な宇宙企業を目指しているのが特徴です。

 さらに、フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバークはInternet.orgという企業連合を立ち上げ、世界中の人々をインターネットに接続させる使命を表明しました。2016年9月の実験は失敗に終わったものの、スペースXのロケットを使った人工衛星の打ち上げを目指し、その理想の実現を図っています。

 膨大な資金力を有する大手IT企業や通信会社は、いったいなぜ人工衛星ビジネスに参入するのでしょうか。それは、世界中のインターネット接続環境を整備することで、デジタル・デバイドという社会問題を解決するという意義とともに、オンライン市場の拡大という狙いが考えられます。

 需要が一巡した先進国では、これまで以上にビジネスの成長が難しくなってきています。そこで、世界の半分以上の人々をオンライン市場に招き入れれば、たとえ彼らの購買力が低くとも、大きなビジネス機会が得られるのです。社会貢献によって商業的な成功を促進する、新時代のビジネスモデルと言えるでしょう。

【次ページ】ソフトバンク「10億ドル投資」の裏にあるトランプの影

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